新型コロナウイルスによる感染症が広がり、手洗いの励行など予防行動の呼び掛けが続く中、意外に触れられていないのが、口や鼻の健康保持の大切さ。岡山大学病院スペシャルニーズ歯科センターの診療講師、岡崎好秀さん(67)が提案するのが、従来のインフルエンザウイルス対策に準じた、口と鼻を健やかな状態に保つことで体の免疫力を維持する取り組みだ。
岡山大学院・岡崎さんが推奨
「朝一番の歯磨きで細菌除去」
「対策その1は、朝起きてすぐ、朝食前の歯磨き。口の中の細菌をできるだけ取り除いておくのが有効でしょう」と岡崎さん。
「鼻呼吸は天然のマスク」
「対策その2は鼻呼吸です」(岡崎さん)。
「あいうべ体操」で自然と鼻呼吸に
鼻呼吸が苦手な人もいる。マスクを着けた息苦しさで、マスクの下で口を空けている人も少なくない。
そこで岡崎さんが推奨するのが「あー」「いー」「うー」「べー」と、大きく口と舌を動かす「あいうべ体操」。1日30セット(10回ずつ分割しても可)やれば、舌の筋肉が鍛えられて舌先が上顎に付き、自然と鼻で呼吸できるようになるという。体操の刺激によって出る唾液で口の中は潤い、舌や口輪筋などの筋肉を動かすことで、口周りやのどの体温も上がる。
新型ウイルスの特徴はまだ分からないことが多い。日本感染症学会は現時点で、仮に感染したとしてもその多くは軽症~中等症の上気道(鼻から喉頭まで)の感染症で終わるとみて「このような症例に対してはインフルエンザ、風邪に準じた対応になる」との見解を示している。
免疫力アップをうたう食べ物を探し求めるより、まず空気や食の取り入れ口を良好な状態に保つことが、健康づくりの大前提だろう。「鼻呼吸こそ天然のマスク。口を病の入り口にしないよう、誰でもいつでもできる予防法で免疫力を保とう」。岡崎さんはそう呼び掛ける。
「歯科衛生士が口腔ケア」→インフル発症率低下・・・在宅療養高齢者で比較調査
口腔(こうくう)ケアがインフルエンザ発症率の低下につながることは、2003~04年、65歳以上の在宅療養高齢者190人を対象にした調査で明らかになっている。
調査では週1回、歯科衛生士による口腔清掃などを実施した「口腔ケア介入群」(98人、平均年齢81歳)と、本人および介護者による、それまで通りの口腔ケアした群(92人、同83歳)を設定。半年後、インフルエンザ発症率を比較したところ、従来型で9人が発症したのに対し、介入群での発症者は1人で、口腔ケアによって発症リスクが10分の1に減少した。
感染すると、高齢者のほか、糖尿病、心不全などの持病がある人ほど重症化しやすいとされる新型コロナウイルス。毎年のように猛威を振るうインフルエンザウイルスとは別物ではあるが、同じ感染症対策の一つとして、口腔ケアにも気を配りたいところだ。
西日本新聞 2020年3月11日掲載より抜粋