「不正咬合」とは、歯並びやかみ合わせが悪い状態のことで、いろいろな種類があります。歯並びが悪い状態の代表例として、歯が凹凸に並んだ「叢生(そうせい)」があります。かみ合わせが悪い状態の例としては、下の前歯が上の前歯より前に出ている「下顎前突(かがくぜんとつ)」、上の前歯が下の前歯よりも大きく前に出ている「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」、奥歯はかみ合っているのに前歯はかまずに隙間ができる「開咬(かいこう)」などがあります。
この不正咬合を放置するといろいろな問題が生じやすくなります。食べ物をかみ切りにくい、歯みがきがしづらいのでむし歯や歯周病になりやすい、発音がしづらいといった問題点があげられます。
また、見た目が気になるということも大きな問題です。人前で大きなお口をあけて笑えない、ついつい口元を隠して話してしまうなど、社会心理的な影響もあります。
矯正歯科治療について
永久歯の歯列の矯正では、「ブラケット」と呼ばれる器具を歯に装着して歯の位置関係を修正する「マルチブラケット装置」を用います。以前は金属製でしたが、近年では目立ちにくいプラスチックやセラミック製のブラケットもあります。
成長期のこどもの矯正では、上下のあごの骨の成長がずれている場合には、あごの成長を促進、あるいは抑えるための専用器具を用いた治療を行います。
しかし、上下のあごの骨の成長が著しくずれていたり歪みが大きいほど、歯列矯正だけでは根本的に改善できない「顎変形症」の場合には、あごの骨の外科手術も必要になります。手術はあごの骨の成長が止まってから行いますので、高校卒業以降に治療を開始する場合が多いです。
矯正歯科治療は原則として自費診療ですが、顎変形症の治療においては、認定を受けた施設下(顎口腔機能診断施設)での治療に限り、健康保険が適用されます。
矯正歯科治療のメリット - QOLの向上
矯正歯科治療を受けるメリットとしては、きちんとかめるようになる。発音の具合が悪かった方では正しい発音になる、叢生の方ではお口の清掃がしやすくなり、むし歯や歯周病になりにくくなる、などがあげられます。また口元が気にならなくなり、人前でもハキハキとしゃべれるようになるなど、社会心理面の改善も矯正歯科治療を受ける大きなメリットといえるでしょう。つまり、矯正歯科治療では、QOL(Quality of Life:生活の質)全般の向上が期待できます。
歯並びやかみ合わせが気になったら、信頼のおける歯科医師と十分に相談し、納得のいく治療を受けていただきたいと思います。矯正歯科治療を受けて、よい歯並び・かみ合わせを得て、ハッピーライフをお過ごしください!
第23回日本歯科医学会総会 記念誌編集委員会編
お口からはじめましょう からだの健康 より